寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナとテオの結婚が決まってから一年以上が経ち、その間急ピッチで進められていた川の工事がいよいよ完了した。
試験的に水を流し、周辺地域に影響はないかを確認した後、本格的な放流が始まる。
ランナケルドとの国境に近い王城周辺を横切る水路は、まだまだ領土の数分の一をカバーする程度だが、状況を見ながら少しずつその距離を延ばしていく予定だ。
今日は、水路開通を祝う式典があり、城内は朝から慌ただしい。
ラーラの指示に従い、女官や侍女たちが式典後に予定されている国王主催の晩餐会の準備に走り回り、その合間には式典に参列する王族たちの準備もしなくてはならない。
ランナケルドからは国王夫妻とクラリーチェをはじめ、有力貴族たちが招待され、警備にあたる騎士団も駆け付けている。
水路作りという大変な仕事にかかわった両国の領民も参加を許され、新しく作られた川沿いは式典を待ちわびるたくさんの人でごった返していた。
「セレナ、こっちへおいで」
王族専用の馬車で式典会場に到着したセレナは、テオの手を借り馬車を降りた。
着飾った姿で人前に出るのが苦手なセレナは、できれば式典には参加したくないのだが、テオと一緒にいられる時間はかなり貴重で、渋々の参加ながらも心を弾ませていた。
セレナは隣を歩くテオに腰を抱かれ、ゆっくりと歩く。
「天気もいいし、良かったな」
テオの言葉に空を見上げれば、キレイな青空が広がり、日差しは眩しい。
着慣れないドレスをまとったセレナの足取りは不安定だ。
そのおぼつかない様子はかわいらしく、テオは何度も見つめ目を細めている。
「俺が選んだドレス、なかなかいいだろ?」
「はい。とても美しくて、私にはもったいないくらいです」
「そんなことないだろ。ラーラも手を叩いて喜んでたけど、すごく似合ってるぞ。乗馬服もいいけど、たまにこうやってふたりで正装するのも悪くないな」
テオはセレナの姿を愛しげに眺め、満足そうに頷いた。