寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
テオもセレナも、この式典のために用意された紺色の衣装を身に着けている。
セレナの衣装は紺というよりは少し淡いサファイア色に近く、ウェストから広がるスカート部分には、パールがいくつもちりばめられている。
襟元に使われているレースは、結婚のお祝いにとアメリアが編んでくれたものだ。
セレナが好きなバラの花をモチーフにした細かなデザインはさすがアメリアという出来栄えで、この日のドレスにぜひ使ってほしいと職人にお願いし、付けてもらったものだ。
髪を結い上げ豪華なドレスを着た自分の姿を鏡で見た時、セレナはアメリアに会いたくてたまらなくなった。
けれど隣国だとはいえ、他国に嫁いだ身。
わがままは言えないと我慢をしているが、相変わらず忙しいテオと過ごす時間も夜だけと限られていて、セレナの寂しさは募るばかりだ。
元気のない姿で鏡の前に立つセレナに気づいたラーラは、「私も負けません」と言ってセレナを励ました。
『アメリアとは子供の頃から一緒にいましたけど、編み物や刺繍は、どうしても敵わなかったんですよ。悔しくて悔しくて、いつも泣いてました。このセレナ様のレースだって、私には編めっこないほど極上ですけど、私も、頑張りますよ。そうですね、セレナ様のお子の産着には、私が編んだレースをあしらいましょう。これからは、私がセレナ様の一番近くにいますからね。アメリアには負けません』
ラーラの言葉に、セレナは目の奥が熱くなった。
他国に嫁いだ不安は大きいというのに、唯一頼れる存在であるテオとはなかなかゆっくり話せない。
不安でたまらなかった心が、ラーラの言葉によって落ち着いた。
今朝、ラーラと交わしたやり取りを思い出しながら、セレナはテオに連れられ、式典が行われる広場に着いた。
王城から少し離れたこの場所は、水路の側にある広場で、普段は国民たちの憩いの場となっている。
広い円形の広場の中心にはたくさんの椅子が並べられ、すでに多くの貴族たちが着席し、その後ろには国民たちがひしめき合っている。
テオとセレナが一番前の席に腰かけると、侍女が側に駆け寄り、ドレスをキレイに整えてくれた。
姿勢を正し、凛とした表情で座っているセレナにテオは温かいまなざしを向けた。