寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナは国王夫妻に背を向けじっと聞いていた。
目を閉じ、唇をぎゅっと結んで胸の痛みに耐える。
王妃が今口にしたことは、長い間セレナも感じていたことだ。
王女には必要のない剣の練習や騎槍の訓練をし、ランナケルドの象徴である川を渡るために船を漕ぐ練習もしてきた。
しかし、それは決してセレナが心から望んでのことではない。
セレナ自身も他国に嫁がなければならない身ではあるが、彼女が王位に就く場合があるかもしれないと考え、苦しい訓練に励んできたのだ。
王位に就くことがなくとも、クラリーチェの役に立てることもあるかもしれないと努力してきたが、その想いは父と母には届いていなかったようだ。
いつまでも、父と母の愛情はクラリーチェだけに向けられている。
そのことに納得しながらも、自分にも同じだけの愛情をいつかは注いでもらえるとどこかで期待していた。
けれど、十九歳になった今も、それはありえそうもない。
セレナは目の奥が熱くなるのを感じ、慌てて部屋を出た。
出る間際に振り返れば、ジェラルドがサーヤを抱きしめ慰めていた。
「心配しなくていい。私にも、考えがある」
サーヤへの愛情を隠そうともしないジェラルドの声に、セレナの心はさらに大きく揺れた。
あれだけお父様に愛されて……お姉様が、羨ましい。
セレナは部屋のドアをゆっくりと閉めると、見張りの騎士たちに顔を見られないよう俯きながら、足早にその場を去った。