寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
 ゆっくりと口にしたその言葉に隠された意味を、セレナが知る事はないだろう。
 テオとカルロ、そしてクラリーチェの三人が長い時間をかけて進めてきた計画。

「セレナに出会った時からずっと、他の誰のためでもない、俺のためにこのサファイアを身に着けたセレナの美しい姿を国民に見せびらかすと、決めていたんだ」
「あの、それはちょっと大げさです。出会った時なんて……」

 出会ったその日にカルロとの婚約が決められたのだ、今のテオの言葉は妙だ。

「私はもともとカルロ王子と結婚する事が決められて……」
「その事は忘れろ。仕方なかったとはいえ、むかつく。俺は一度としてセレナを諦めた事はないし、兄の婚約者だと思った事はない」

 セレナの両肩を掴み、強い口調で言い切るテオに、セレナは圧倒された。

「あ……は、はい」

 思いがけない言葉に思わずそう答えたが、テオの言葉には矛盾が多すぎる。
 きっと、この場の雰囲気と流れでそう言ってしまったのだろうと、セレナは納得した。
 最近、ようやくテオに愛されていると信じられるようになってきたが、諦めたことはないと言われても、それは信じられない。
 それでも、テオの甘い言葉は単純に嬉しい。

「俺も王妃と同じ気持ちだ。他の誰でもない、セレナが俺の妃で良かった」

 セレナを見つめる瞳が光を帯びた。

「テオ殿下……私も他の誰でもなく、テオ殿下の正妃となれて、良かったです」

 セレナの表情は晴れやかで、ほんの少しのためらいも照れもない。
 これも、結婚して何度も体を重ね、毎日甘い言葉を繰り返したテオの努力の成果だ。

「王太子ご夫妻の仲がいいのは結構ですが、そろそろお時間ですので、教会に向かいましょう。さきほどから部屋の外で騎士たちが待っていますよ」

 ラーラの声が部屋に響き、セレナとテオは互いの額を合わせて笑い声を上げた。


< 257 / 284 >

この作品をシェア

pagetop