寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
ランナケルドでは、王族の結婚式は王城に隣接している教会で行われる。
豊かな水資源によって発達した農業が国を支え、立地の良さから交易の場として発展しているが、それ以外特筆できるものを持つでもなく、国の警備は隣国ミノワスターに助けられているという弱小国。
それでも近隣各国から大勢の王族、貴族たちがクラリーチェとカルロの結婚式に参列している。
さすが大国ミノワスターとの深い縁を結ぶ結婚式だ。
広い教会の席はすべて埋まり、これまで公の場に出る機会がほとんどなかったクラリーチェの美しい姿に驚いた幾つものため息が聞こえる。
長い時間をかけて作られたウェディングドレスは極上のシルクで仕立てられ、華奢な体にオフショルダーのドレスがしっくりと似合っている。
色白の肌に赤い唇が映え、セレナよりも幾分薄い紫の瞳は喜びにキラキラ輝いている。
カルロも白い正装に身を包み、襟と折り返した袖口に金糸で施された刺繍が高貴な雰囲気を高めている。
普段は硬い表情を崩さないというのに、表情は柔らかく口角も上がりっぱなしだ。
セレナは、幸せそうなふたりの様子に胸がいっぱいになった。
ずっと、愛し合っていたはずのふたりだ、こうして結婚の日を迎えられてどれほど幸せだろうか。
愛する気持ちを隠し続け、ともに生きることはできないと諦めていたテオと結婚できたセレナ自身もクラリーチェに負けないほどの幸せな毎日を送っている。
愛する人と結婚できることの幸せを、クラリーチェにも末永く味わって欲しいと、セレナは願った。
司祭に誓いの言葉を述べ、正式に夫婦となったクラリーチェとカルロは、その後王城のバルコニーに立ち、広場に集まった多くの国民達に手を振った。
その後ろ姿を部屋の中から眺めていたセレナは、隣に立つテオに目くばせを送った。
数か月前に自分達もああやってバルコニーから手を振った事を思い出しているのだ。
テオもその日の事を思い出し、セレナに頷いて見せた。