寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
永きにわたり、ランナケルドの国王はミノワスターの願いを聞き入れず、水路の拡大を拒んできた。
水は、ランナケルドをミノワスターの軍事力によって守ってもらうための保証だからだ。
その保証を手放すということが、国の存続に影響するかもしれないとわかっているはずなのに、ジェラルドの言葉に後悔は感じられない。
セレナは顔を歪めた。
「お父様、それはそうかもしれませんが、カルロ殿下と引き換えに川の流れを変えるなんて……いくら娘のためだとはいっても、それは」
「いいんだ。私がしてやれるのはそれくらいなんだ……」
声高になったセレナの言葉を、ジェラルドが遮った。
「陛下……ちゃんとセレナに、いえ、王太子妃殿下に、伝えてもいいのでは」
サーヤがジェラルドの腕に手を置き、囁いたが、ジェラルドは首を横に振った。
「もう、済んだ事だ」
「ですが」
「サーヤ。もういいんだ。娘のためにできるだけの事をしただけだ。それに、ミノワスターはランナケルドに騎士達を常駐させ、これまで同様我が国土を守ると約束している。もちろん書面で約束を交わしているから安心しろ」
腕に置かれたサーヤの手に、ジェラルドが自らの手を重ねた。
何度かポンポンと叩いて、サーヤを安心させるように笑った。
そしてセレナに向き直る。
「国民たちの歓声が聞こえるだろう? 次期女王の幸せを我がことのように喜んでいるんだ。私は……国民がこうして王家の慶事に笑顔を作る事ができる世であって欲しいと願っている」
「……その気持ちは、よくわかります」
ジェラルドの言葉に、テオが同意する。
次期国王となるテオにはジェラルドの気持ちが理解できるのだ。
国民が王家の慶事をためらいなく喜べる余裕こそが、安定した世の中である証だからだ。