寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない

 テオを手に入れるためには女王になるしかないと思い、そしてティアラもクラリーチェに取られたくないと思った子供の頃を思い出し、苦笑する。
 結局、何をどう頑張っても女王にはなれず、ティアラもいずれクラリーチェに譲られるのだろう。
 しかし、一番欲しかったテオは今、セレナの夫として凛々しい姿を見せている。
 思いがけない展開による婚約者の変更を経て、ようやく王太子妃としての自覚も芽生えてきた。
 王命による結婚であっても、テオはセレナを愛し、セレナもテオを愛している。
 父と母の愛情も、海の向こうで有名だというおいしい果物も、きらびやかな宝石も、そして丁寧に施された刺繍が広がるドレスも手に入らなかったが、何よりも一番欲しかったテオの妻となり、セレナは今とても幸せだ。
 今は、絶えず寂しかった子供の頃を補っても余りある愛情を手に入れているのだから。

「お父様、お母様」

 セレナはくしゃりと笑い、ジェラルドとサーヤにもう一歩近づいた。
 少し手を伸ばせば触れられるほどの近い距離だが、照れてしまい、近づくだけで精一杯だ。
 希薄だった親子関係に納得できても、親子で触れ合うにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 それでも、セレナはどうしてもジェラルド国王に、というより父に伝えたい気持ちがあった。
 ミノワスターに嫁いで以来、つつがなく、日々笑って暮らせるのは父のおかげであり、感謝していることを、ちゃんと伝えておかなければならない。
 セレナは腰を落とし、深々と頭を下げた。

「ミノワスターに、水路を広げてくださり、本当にありがとうございました」
「いや、頭を上げなさい……いえ、お上げください。水路はカルロ王太子を王配として迎えるためにこちらからお願いした事です」

 ジェラルドは、それまでの遠慮した口調ではなく、はっきりとした口ぶりでそう言った。

「いずれ賢王になるに違いないと言われていたカルロ王太子をランナケルドに王配として迎えたのだから、それは当然のこと」

 ジェラルドはきっぱりとそう言った。

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