寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
思わずそう言ってしまいそうになった時、スツールに腰かけているセレナの足元に小さな女の子がやってきた。
「あら、ジュリアも来てたの?」
セレナの足を小さな手で掴んだのは、近くに住むジュリアという四歳の女の子だ。
セレナのことが大好きで、会えばいつも抱っこをせがんでくる。
セレナは慌ててテオの腕から離れ、スツールに座りなおした。
テオに抱きしめられていた姿を見られていたことに気づき、ハッと店内を見回せば、そこにはセレナとテオに冷やかすような視線を向けている顔見知りたち。
ジュリアの両親の姿もそこにあり、ランチの最中だったようだ。
これまでにも、テオに振り回され感情が大きく上下する姿を見られたことがあるとはいえ、恥ずかしい。
それに、テオは姉のクラリーチェの婚約者だ、こうして親しすぎる距離でじゃれ合っていいわけがない。
それをわかっていても、そして、多くの人の視線にさらされていると感じていても、テオを好きな気持ちはどんどん大きくなり、抑えがきかなくなっている。
どうしたらいいのだろう……。
セレナは落ち込む気持ちをおしやるように、スツールから降りジュリアを抱き上げた。
その様子を、顔見知り達、そしてミケーレやアメリアがにやにやと見ている。
「や、やだ」
うなじにキスされてぼーっとしていた姿も見られていたに違いない、それどころかテオに好きだと告げそうになったことも……。
「セレナちゃん……? どうしたの? お顔がまっかっか」
「あ、お願いだからしばらくお口は閉じておいてね」
ジュリアの言葉に焦ったセレナは、ジュリアをぎゅっと抱きしめ、その肩に顔を埋めた。
真っ赤だと見なくてもわかる自分の顔を隠してしまいたい。