寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「テオ……」

 セレナの口から洩れた声はあまりにも小さく、テオの耳にしか届かない。
 テオは、とうとう耳まで真っ赤にしたセレナのうなじに唇を寄せ、傷痕を甘噛みした。

「ひゃっ。な、なに……」

 テオの唇からの刺激に、セレナの体が跳ねる。
 指先で触れられるだけでもドキドキして呼吸も乱れるというのに、甘噛みまでされ、セレナの受け入れ許容量はいっぱいいっぱいだ。
 テオの腕の中、動きを止めて心を落ち着けようとするが、それはなかなか難しい。
 テオはセレナの様子に満足し、うなじにあった唇を、セレナの耳元に寄せた。

「まあ、傷跡があっても、セレナの未来は決まってるからな。大丈夫だ、幸せな花嫁になれる」

 セレナを胸に抱いたテオは、今はまだ言うつもりのなかった言葉を口に出したことに焦りながらも、心は満ちていた。
 川辺で華奢な体を抱き上げた時から、テオにとってセレナは特別な存在だ。
 愛しくてたまらない。
 テオの気持ちを知らずにいるセレナは、花嫁という言葉に大きく反応し、体はそれを望んでいないかのように硬くなった。
 テオに抱かれ、その身を預けることになんの躊躇もなかったが、その言葉によって、現実に戻された。
 そう。もうすぐ花嫁になるのだ。
 その相手は、テオではない。
 セレナは一瞬で緊張した体を少しずつ動かし、間近にいるテオを見た。
 髪の色と同じ淡いブラウンの瞳は、出会った時と変わらず透き通るようで、いつもセレナに優しい視線を向けている。

「テオ……私、やっぱり……」
 
テオの瞳に見つめられ、自分の想いを口にしそうになった。

テオが好き。

< 36 / 284 >

この作品をシェア

pagetop