寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「セレナはこの国を離れてひとりでミノワスターに嫁ぐんだから、ひとつやふたつ、セレナのお願いを聞いてもらってもいいと思います」

 聞き慣れないクラリーチェの力強い声に、セレナは驚いた。
 荒々しいクラリーチェの表情も、珍しい。

「私はこのままこの国でお父様とお母様とともに暮らせるけれど、セレナは家族も誰もいない国で王太子妃なんて立場で……お願いだから、セレナの味方になってください」

 鋭い視線を、何故かテオに向けているクラリーチェ。
 テオもその視線を厳しい表情で受け止めている。
 ほんの少し前まで柔らかな雰囲気で明るく話していたとは思えない空気が部屋に満ちる。
 クラリーチェのベッドに腰かけ、その様子を見ているカルロは、大したことでもないというように口元だけで笑っている。
 それもまた、セレナには理解できない。
 何故クラリーチェがテオに気持ちを吐き出すのかわからないのだ。
 それを言うべき相手はセレナと結婚するカルロのはずだ。

「お姉様? あの、テオ王子にそれを言うのは間違ってるわよ。お願いするなら、カルロ殿下じゃ……」
「わかった。陛下にはちゃんと言っておく。料理がしたい時にはいつでも調理場を使えるように料理長に言っておくし、馬に乗りたければ思う存分乗っていい」

 セレナの背後から、テオの声が聞こえた。
 その落ち着いた言葉はクラリーチェに対する答えのはずなのに、テオはまっすぐセレナを見つめている。
 まただ……。
 セレナはふと思い出す。
 ランナケルドとは比べ物にならないほどの大国であるミノワスターの王太子の結婚は、ランナケルドの次期女王の結婚よりも優先される。
 よって、カルロ王太子とセレナの結婚を終えた後で、テオとクラリーチェの結婚が執り行われることが決まっているのだ。
 そうなれば、セレナがミノワスターに嫁いでしばらくは、テオが同じ城内にいるという事になる。

「……そういう事か」

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