涙が落ちたあの日から

*涙のジンクス


「お先に失礼しまーす」

お昼にバイトが終わると、店内は昼食を買いに来たお客さんで、ごった返していた。


その間をすり抜け、急いでコンビニを出ると、私は駅へ向かった。

今日は午後から学校だ。


コンビニから駅まで10分もかからない。


狭い路地裏を早足で通り抜けると……



「あ! るいちゃん! 奥田るいちゃんですよねー!?」

突然、女子高生2人に呼び止められた。



「え? なに? なに? 奥田るいってー?」


「えー、知らないのー? 今、SNSですごい拡散されてるんだよー」


2人は私の行く手を阻むように立つと、私を見ながら言い合っている。




「……」

すごいな……。

こんなに急いで、うつむき歩いていても、すぐ見つかるなんて恐ろしい……。





「るいちゃんの涙を見ると願いが叶うって、本当ですかー?」




「……」

またか……。


私は、また大きくため息をついた。



「……そんなの嘘です。友達が嘘を流しただけだから。私の涙見たって願いなんて叶うわけないし、まず私、泣かないし」



「えー!? そうなのー!?」


「ウソとかショックなんだけどー」







「はぁ……」



きゃあ、きゃあ、騒ぐ女子高生を置いて、私は歩き出した。


年なんて大して変わんないのに、あのテンションが時々、面倒くさくなる。



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