エリート上司の過保護な独占愛
「あ、はい。土日は結構忙しかったんで。――でも、これからはまた来ます」

 ここのところ休みと言えば、裕貴と会うことが多かったせいだ。

 思わず思い出してしまい、唇を噛んだ。

 よかれと思ってした話題が、まったく逆の効果になってしまった。それに気が付いた奥さんが声を出さずにマスターを叱責する。

「ごめんね」

「いえ……」

 苦笑いくらいしか返せず、沙衣はそろそろ家に帰ろうと思う。どこにいても気分転換はできそうにないからだ。

 ちょうど奥さんが〝close〟の札を出しに扉に向かったのが見えて、沙衣も財布を取り出す。しかしちょうどそのとき奥さんが扉をあける前に、向こうから開きカランコロンという音が店内に響いた。

「すみません、今日は――」

「閉店時間だってことは、わかってます、でも少し」

 奥さんの横から顔を出したのは裕貴だった。

「っ……どうして」

「よかった。見つかった」 

 本当にほっとした顔をした彼を見て、ここに来てまで胸が甘くうずく。スマートフォンの電源も切って彼から逃げるように電車に乗ったのに、探してもらえるとやっぱりうれしかった。
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