エリート上司の過保護な独占愛
「あの、お知り合いかしら?」

「はい。閉店なのは重々承知なのですが、少しだけいいですか?」

 真剣な裕貴に押されて奥さんは「はい。どうぞ」とテーブルの席に通した。裕貴は案内される途中、カウンターに座る沙衣の手をとって「こっちきて」と小さい声で言って、テーブル席の椅子を引くと、沙衣を座らせた。

「悪い、こんなところまで押しかけて」

「いえ」

 そうさせたのは沙衣だ。謝らなくてはいけないと思うけれど、言葉が出てこず膝の上に置いた手をぎゅっと握った。そんな沙衣の様子を見て裕貴が話を始めた。

「打ち合わせが終わって、急いで電話したけどずっと留守電で。部屋に行ってもいないし、正直焦った」

「ごめんなさい」

 勝手なことをして、もっと怒られても仕方がない。それなのに冷静に話をする裕貴の態度に、沙衣はより一層自分のやったことを後悔した。

「謝って欲しいわけじゃないんだ。ちゃんと俺の話を聞いてほしい」

「はい……」

 何も言われても仕方がないと覚悟した……つもりだったけれど、顔もまともに上げられずに、ただただテーブルの上に視線を落としていた。

「沙衣。これ」

 その視界の中にすっと小箱が差し出された。スカイブルーの箱に白いリボンがかけられている。
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