エリート上司の過保護な独占愛
 運ばれてきた料理は、イタリアンのコースの簡易版といったところだろうか。カプレーゼやイワシのマリネなどののった、アンティパストのお皿。本来になら後から運ばれてくる魚介を使ったオイルベースのパスタ。それにメインのミラノ風カツレツまで、目の前のテーブルには所せましと並んでいた。

「ちょっと、せわしない気もするけど、好きなものを好きなだけ食べたらいい」

 料理に目を瞠る沙衣に裕貴が声をかけた。

「課長は……ワイン飲まれますか?」

 テーブルの上には、よく冷やされた白ワインが置かれていた。
「せっかくだし、もらおうか。沙衣は……やめておこう。ぐっすり眠られたんじゃ……俺、今日は耐えられないだろうから」

 なんとなく言っている意味がわかったような気がして、思わずだまりこくって顔を赤くした沙衣を見て、裕貴がクスクスと笑う。

 白ワインと、オレンジジュースで小さく乾杯をして食事を始めた。

 さっきまで緊張していたにも関わらず――現金なもので、食事を始めるとそのおいしさに夢中になった。色々あってお腹がすいていたことを思い出したかのように、食事を楽しむ。

 裕貴にあれもこれもと勧められて、次々口に運んでしまう。裕貴はと言うと、紗衣に食べさせるばかりで、自分はワインを飲んでいた。

「おいしい?」

 パスタを頬張る紗衣を見て、なぜだか裕貴はうれしそうだ。

「はい。あの、でも・・・・・・なんだか餌付けされてるみたいです」

「ん? まぁ、そうかも。しっかり食べさせてから美味しくいただくつもり」

 熱っぽい目で、意味深なことを言われてドキッとしてしまう。とたんに、この先に起こるを意識してしまった。
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