エリート上司の過保護な独占愛
 恥ずかしくてなるべく目を合さないようにして、脇を通り抜ける。

「ごゆっくり・・・・・・と言いたいところだけど、あまり待たせないでくれるとうれしい」

「えっ・・・・・・」

 裕貴は艶めいた笑顔を浮かべる。その表情が紗衣の反応を見て楽しんでいるように見えた。

「もう、からかわないでください。今日の課長はなんだか意地悪です」

「悪い。でも、からかってるわけでも何でもない。早くシャワー終わらせて戻ってきて」

 屈んだ裕貴が紗衣の頬にキスをした。そんなことをされたら素直に「はい」としか答えられなくなってしまう。

 小さく返事をしてバスルームに向かった。扉を締めるとそこにあるチェアに思わず座り込んでしまった。

 ドキドキと心臓の音がうるさい。今からこんな調子でこの先大丈夫なのだろうか。色々と考え込みそうになって『あまり待たせないで欲しい』と言った裕貴の言葉を思い出し、いそいそと洋服を脱いだのだった。

 シャワーの間も裕貴のことで頭がいっぱいだ。少し念入りに洗ってしまった左腕がひりひりする。念入りすぎてすでに結構な時間が経ってしまった。慌ててバスルームから出ると、さっと髪を乾かし裕貴に倣ってバスローブを身に着けると、ゆっくりと部屋に続くドアから、顔を出した。

(あれ……?)

 さっきまで明るかった部屋のライトが絞られていて、薄暗い。テーブルに置いてあるキャンドルの明かりが温かい光で部屋を照らしていた。

「こっちにおいで」

 様子をうかがっていた沙衣を、裕貴が呼ぶ。彼の前にあるテーブルには、ピンクと白のバラの大きな花束と、バースデーケーキが置かれていた。ケーキのプレートにはもちろん沙衣の名前が書いてある。
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