エリート上司の過保護な独占愛
「何―! アイツ、いったい何てことしてくれてるのよ!」

 上司に向かってアイツ呼ばわりするほど、瞬間的に絵美の怒りが頂点に達した。

「それで、相手はどこの馬の骨よっ?」

 興奮する絵美に、今日あったことをひとつずつ話をしていく。合鍵をもらってうれしかったこと、約束がキャンセルになってさみしかったこと……そして裕貴が元カノとおぼしき人物と会っているかもしれないということ。

「私、なによりも嫌だなって思ったのが、課長は仕事だって言ったんです。でも、桧山さんとはわざわざ外で話をするような仕事なんてしてないはずですよ。 なんだか嘘をつかれたような気がして、それがとてもつらいんです」

「そっか……そうだよね」

 絵美が沙衣の背中をさすり慰めていると、それまで黙って聞いていた慎吾が急に口をはさんだ。

「桧山さんって……それって 桧山みどり?」

「はい……そうですけど」

 急に慎吾の口から、みどりの名前が出て驚いた。

「え、慎吾、アンタなんか知ってるの? 全部吐きなさい! ちょっとでも隠し事したらただじゃおかないわよ」

 慎吾の腕をつかんで、ぎりぎりと締め上げる絵美はものすごい形相で彼をにらんだ。

「ちょ、ちょっと絵美ちゃん痛いよ。沙衣ちゃんと俺どっちが大事なの?」

「そんなの、沙衣に決まってるでしょうが。ほらさっさと全部話しなさいっ!」

「ひどい……絵美ちゃん。まぁ後輩に優しい絵美ちゃんも好きだからいいけど。ちょっと、とにかく手を放して」

 悲鳴を上げる慎吾は、本当に痛そうだ。

「すみません、なんか色々」

 なんだか慎吾が不憫になって来て、謝る。自分がこんな悩みをここに持ち込んでしまったせいだ。
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