エリート上司の過保護な独占愛
「そうだ。あのときの裕貴は周りに見せないようにしていたけど、やっぱりどこか気にしているみたいだった」

「それって、まだ彼女の存在を引きずってるってこと?」

 沙衣の中にあった不安を、絵美がズバリと口にした。

「それはどうだろうな……でも少なくとも彼女との恋の終わりがその後の裕貴の考え方に影響を及ぼしたのは間違いないだろうな」

 話を聞けば聞くほど、みどりのことが気になって仕方ない。思いつめる沙衣を、絵美が必死で慰める。

「なんで、そんな顔してるのよっ! たとえふたりで会ってたとしても、きっと仕事か何かちゃんとした理由があるんだって」

「そうでしょうか?」

 裕貴がはっきりと言った断りの言葉を思い出す。

「課長は、仕事だって言いました。もし桧山さんと会うなら、私にそう伝えてくれたらいいと思いませんか?」

 沙衣の言葉に、絵美も言葉を詰まらせた。しかしそれでもなお、なんとか沙衣を慰めようとする。

「それも何か理由があったんだと思うよ。それはちゃんと自分で確認しないと……」

「……はい」

 どうして……どうして……と胸の中で繰り返すばかりでは何の解決にもならない。けれど、はっきりと確かめることで、傷つくかもしれないと思うと、一本の電話を掛けることさえも怖かった。

 目の前に食事が並んでも、手を付ける気にもならずウーロン茶だけを飲み帰路についた。
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