エリート上司の過保護な独占愛
「沙衣、ひとりで大丈夫?」

「はい。話をしたらずいぶん元気になりました」

 心配かけないように笑顔を見せたが、まったく元気になっていないのは絵美にも伝わった。

「とにかく、ちゃんと話をしないと何も解決しないよ。みんなそうやってひとつずつ乗り越えていくものなんだから」

 絵美の言葉に隣に立つ慎吾もうなずく。

「俺らだって、色々あったから。みんな色々あってあたりまえなんだからね」

「たまには良いこと言うじゃない」

 肘でつつかれた慎吾は、なぜだかうれしそうだ。

「はい……もう少し冷静になってきちんと話をしたいと思います」

「課長となら、ちゃんと話ができるはずよ。もらった合鍵の意味をちゃんと理解しなさい。課長ってば、本当は今日も沙衣に待っていてもらいたかったんじゃないの?」

(合鍵の意味……かぁ)

 沙衣は絵美たちと別れて、ひとり歩き出した。六月のじめっとした空気が体にまとわりつく。鬱々とした気分のまま駅に向かって歩く。改札までたどり着きパスケースを手にして足を止めた。

(このまま帰ってもいいの? こんな気持ちのまま……)

「やっぱりちゃんと話をしなきゃ」

 沙衣は踵を返して、裕貴の部屋へ向かった。
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