エリート上司の過保護な独占愛
「課長は……っ、何度もこういう経験があるかもしれません。でも私は、全部初めてで、こういうこともスマートに流すことが……できなくて、でも、嫌われたくなくて……」

 支離滅裂な言葉も、裕貴はしっかりと聞いてくれた。彼の手が伸びてきて、沙衣をぎゅっと抱きしめた。

「ごめん……辛い思いさせて」

 温かい胸と、謝罪の言葉にますます涙が止まらなくなる。しばらく彼の腕の中で声を上げて泣いた。

 ひとしきり泣いた後、ソファに移動する。裕貴は沙衣を膝の上に抱きかかえたまま、話を始めた。

「こんなに泣かせてすまなかった。たしかに、みどりとは昔つき合っていた。それは本当だ」

 すでに知っている事実なのに、本人の口から聞くとやっぱりつらい。唇をぎゅっとかみしめた。

「でも、今日のことは本当に仕事の話だったんだ。実質は大迫にまかせているとはいえ、プロジェクトの責任者は俺だからな。だからみどりの呼び出しに応じた。皆に言わなかったのは、俺が表にたつと、頑張っている大迫の気分を害するだろうと思って。アイツには今回のプロジェクトで自信をつけてほしいからな」

「そうだったんですか……」

 沙衣は裕貴の考えを聞いて〝みどりと会った〟という事実だけで、裕貴を責めてしまったことを後悔した。
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