エリート上司の過保護な独占愛
 立ち上がったものの、仕事にも関係してくると聞くとこの場から去ることができない。紗衣は逃げ出したいと思いながらも、もう一度椅子に座ってみどりに向き合った。

 店員がコーヒーをふたつ運んできて、それぞれの前に置いた。

 沈黙が辛くて、コーヒーにミルクを淹れて混ぜる。話を早く終わらせたいような、聞きたくないような複雑な心境だった。

 みどりがひと口コーヒーを飲み、カップをソーサーに戻した。

「急に、不躾な質問してごめんなさいね。私、回りくどい話キライなのよ」

 紅い口紅が引かれた唇がニコッと笑う。しかしそこには親しみやすさは感じられず、逆に警戒心を煽った。

「いえ……それでさっきの質問が、仕事に一体どういう関係があるんですか?」

 訊かれた質問に、質問で返した。

「まぁ、とりあえず裕貴のことは置いておいて……今回の企画ってあなたの案なのよね?」

「はい……最初に言い出したのは私ですけど」

「この企画がイチかバチかって内容だってことは理解しているの?」

「えっ、どういう意味ですか?」

 最初は紗衣も実現するとは思っていなかった。けれど、裕貴が形にしてくれ、企画会議でも上の了承を得ている。それなのに“イチかバチか”というのはありえないのではないだろうか。

「この企画だけど、裕貴がかなり無理して通したらしいわよ。全責任は自分が取るって言って。だから上も渋々了承したんだって。これってどういうことか分かる?」

「失敗したら、課長は……」

「これまで積み上げて来たものが、なくなるわね」

(じゃあ、もしうまくいかなかったら……)
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