エリート上司の過保護な独占愛
 それならば、犠牲になるのは自分だけでいい。沙衣が心が引きちぎられる思いをしながらも、すぐに決断した。

「私が、課長と別れれば、それで桧山さんは満足なんですか?」

 膝の上で拳を強く握る。声を震わせないようにするのが精いっぱいだ。

「そうね。まずは、目障りなあなたがいなくなってくれないとね……。私昔の男が他の女と幸せになるの、嫌なのよ」

 自分は裕貴と別れたあと、すぐに結婚までしたのに、なんて言い方だろう。それに普通に考えて、裕貴のことが好きならば彼を困らせるようなことはしないはずだ。しかし、彼女は自分が欲しいものを手に入れる為に、手段は選ばない。

 こんな考えのみどりに屈しなくてはいけなくて、情けない。

 けれど裕貴のことを思うと、この選択肢しか沙衣にはなかったのだ。

「わかりました。おっしゃるようにします」 

「そう、よかったぁ。これでプロジェクトも裕貴の未来も安泰ね。大丈夫あなたの代わりに公私において私が支えるから、心配しないで。じゃあ」

 笑顔を浮かべて、テーブルにお金を置くとみどりはさっさと扉の向こうに消えて行ってしまった。自分の思い通りになり、満足したに違いない。

 けれど沙衣は、怒りでと悲しみで微動だにできない。ただ目の前で覚めていくコーヒーを眺めていた。
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