エリート上司の過保護な独占愛
 仕事が終わり、待ち合わせの本屋に併設されているカフェに向う。ここは紗衣と裕貴が相席をした思い出のカフェだ。

 紗衣はほんの少し残業しただけですんだが、裕貴はまだ仕事が残っている。なんとか都合を付けて、少しの間仕事を抜けて出てきてくれる。

 あの日と同じキャラメルラテを注文して席についた。平日の夜とあって、以前程は混雑していない。読書を楽しむ人やパソコンを開いて仕事をしている人が目立つ。

 (ここで、ふたりで話をしたの、ついこの間なのにな)

 短い間にいろんな事があった。裕貴の側にいられることが本当にうれしくてずっとこのまま一緒にいられると昨日までは思っていた。

(ダメ、ダメ。泣いたりなんかしたら計画が台無しになっちゃう)

 思わず涙が滲みそうになり、あわてて唇を噛んで我慢する。これが裕貴にできる、最後の恋人としての役割なのだと、自分に言い聞かせて。

 二十分ほど待った頃だろうか、裕貴が走って来るのがカフェの窓から見えた。向こうも紗衣に気がついたようで、笑顔で軽く手を上げた。

 思わず手を振り返しそうになった手を、ぐっと握りしめて軽く会釈する。

 裕貴はそれに怪訝そうな顔をした。そしてそのまま紗衣の前に現れる。
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