エリート上司の過保護な独占愛
 ――あれから一月が経ち、すっかり秋めいてきたころ。

 ユニヴェールを中心とする企画の、契約が交わされることになった。

(やっと……この日が来たんだ)

 紗衣はあれからこの企画の成功のために、がむしゃらに働いた。失恋の痛手を忘れるにはもってこいだったのだが、契約を交わす今となってもまだその痛みは継続中だ。

 色々と世話になった絵美には“別れたこと”だけを伝えた。もちろん、理由を聞きたがっていたけれど、それを話すわけにはいかない。

 もし絵美が裕貴に話しをしてしまったら、これまでの我慢がすべて水の泡だ。それだけは避けたい。

 絵美が心配してくれていることは、痛いほど伝わってきた。しかし紗衣は“自分が悪い”の一点張りで何も話さずにいた。変なところで頑固な紗衣の性格を知っている絵美はそれ以上はなにもいわず、耐え忍ぶ紗衣を黙って見続けてくれていた。

 法務部からもどってきた契約書をもう一度見直して、不備がないかチェックする。

(これで、大丈夫!)

 机の上でトントンと書類を揃え、準備は整った。大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。

 今日は裕貴もみどりも同席する予定になっている。
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