エリート上司の過保護な独占愛
「おまたせしてすみません。では、始めましょうか?」

 桧山の声で席につく。

(みどりさんは、どうしたの?)

 いつもは彼女がスタジオH側の担当だった。契約に関しては代表であるケイジが行うので、なんら問題はないのだが気になった。

 もう一度契約内容について確認をし、三者がそれぞれ押印をして、無事契約は終了した。

「ありがとうございます。これからが本番ですから、精一杯頑張らせていただきます」

 大迫が頭を下げると、拍手で契約締結を祝った。

 雑談を終えたあと、大迫と藤本が先に会議室を出る。ついで桧山も立ち上がったので、会議室の扉を開けようと立ち上がったところで、桧山がそれを止めた。

「本城さん……でしたよね。少しお話があるのですが」

「え……契約の内容についてでしたら――」

「いえ、あなた自身にお話があるのです」

(いったい……どういうこと?)

 みどりにも同じようなことを言われたことを思い出した。

 とまどった紗衣は、ふいに裕貴に助けを求めるような視線を送ってしまいハッとする。これまで極力目を合さないようにしていたのに、咄嗟のときに本音が出てしまう。

 慌てて視線を、桧山に戻した。

「わかりました。あの、おかけください」

 元の席に戻り、桧山の話を聞く。裕貴は紗衣の側に来て彼女の隣に座った。

(課長……は同席するの? 心強いけれど、どうして?)

 正直話の内容の見当がつかずに、緊張している。そんな資格はないとわかっているけれど、裕貴が同席してくれて助かった。
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