エリート上司の過保護な独占愛
「課長……みどりさんのこと、いつからご存知だったんですか?」

「紗衣が別れ話切り出してきて、それと同じタイミングで、みどりからのアプローチが激しくなって、カマをかけたらあっさり認めた」

「そうだったんですか……」

「すぐに紗衣に話しをしようと思った。でも、紗衣はずっと俺のことを避けているし、それに根本的な解決に至らないままだと、君はまた自分を犠牲にするだろう。だから桧山さんに話をして協力がもらえる今日まで時間がかかったんだ。悪かった」

 裕貴の腕に力がこもった。紗衣に対する思いの強さが表れているように感じた。

「私、みどりさんに課長と別れるように言われて……っ」

 思い出すと、また涙が滲んできた。

「ひとりで我慢させて、悪かった。でも、俺は別れたつもりなんてなかったんだけどな」

「えっ? だって合鍵を持っていったじゃないですかっ!?」

 驚いての顔を見上げる。

「確かに鍵は返してもらった。紗衣は変なところで頑固だから一度決めたことは譲らないだろう。俺にも君がどうして別れたいといったのか、知る時間が必要だった。嘘をついているのは明らかだったからな」

 裕貴は裕貴で、紗衣の事を思い色々と考えた末のことだった。

「私ってば、すっかり課長に嫌われたと思っていました」

「俺は“別れる”だなんて一言も言ってないけどな」

 思い返してみれば、確かにそうだ。

「でも、そんな――」

「別れたって勝手に勘違いして、俺は捨てられるところだったのか?」

「ち、違いますっ!」

 慌てて否定する紗衣の頬を、裕貴の大きな掌が包み込んだ。

「嘘だよ。俺が、紗衣を手放すはずがないだろ。こんなに大事にしてるのに。たとえどんな状況でも、君だけは手放すつもりはない」

 裕貴の手が、紗衣の目尻に浮んだ涙を拭う。
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