エリート上司の過保護な独占愛
「仕事なんていくらでもやり直しがきく。だから俺にとっては、紗衣以上に大事なものなんてないんだ」

 真剣な眼差しは、紗衣の心まで射抜く。

「だから紗衣も約束して。これから先、何があっても俺から離れないって。問題は必ずふたりで解決していくって」

 裕貴の言葉に、感動で心が震える。紗衣からの別れの言葉で裕貴だって傷ついたはずだ。

 けれど彼は諦めなかった。紗衣の事を思い、紗衣のために行動し、そしてふたりの気持ちを守ってくれた。

「逃げ出したりして、すみません。自分にできることが、他にないと思ってしまいました」

 謝る紗衣に、裕貴は優しい眼差しを向ける。

「これからは、いつでもふたりで。いい?」

「はい」

 返事と共に、また涙がこぼれ落ちる。一ヶ月の間、泣かない夜はなかった。その涙とは違う、幸せに満ちた涙。

「じゃあ、そろそろ俺にご褒美くれてもいいんじゃないか?」

 あいかわらずピンとこない表情の紗衣の頬に、裕貴がキスをした。

 驚いた顔をした紗衣だったが、もう一度裕貴の顔が近づいてくると、次はゆっくりと目を閉じた。

 唇が触れる瞬間……。

「愛してるよ。紗衣」

 甘く甘くささやかれて、唇がかさなった。

 裕貴の思いがこもった、熱いキスにが紗衣の傷ついたこころを癒し、同時に愛情で満たしていく。

 夕日に染まる屋上で、ふたりは思いを確認しあった。
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