エリート上司の過保護な独占愛
「こうやって、自分に手をかけてあげられるのも、女性の特権ですから。お化粧楽しんでくださいね」

 沙衣にとっては目から鱗の言葉だった。これまで「社会人だから」という理由で、義務としてやってきたメイクを楽しむだなんて、思ってもみなかったからだ。

 確かに楽しいかも。色々な道具を使い少しずつ変わっていく鏡の中の自分を見ているのは不思議だったけれど、わくわくした。

「これは、この次につかうんですよね?」

「はい。こうやって使うとハイライトにもなるんですよ。ここに……」

 自然と聞きたいことが出てきて、質問すると丁寧に教えてくれた。今まで敷居が高い気がして近寄りがたかった場所だったが、誤解だった。

 予算の範囲内で、美容部員と絵美のアドバイスを受けながら、沙衣は数点化粧品を購入してカウンターを後にした。

 デパートの出口に向かって歩いていると、両サイドにジュエリーショップが並んでいた。ひとつのショーケースに飾られてるペンダントが沙衣の目を引き、思わず足を止めた。

「これ、かわいいわね」

「絵美さんもそう思いますか? 今度のお給料が出たら、買おうかと思います」

 その声を聞いた店員が一歩こちらに近寄った。

「ダメダメっ! こういうのは彼氏に買ってもらわないと」

 絵美の言葉に一歩近づいた店員の顔が、残念そうになる。

「そうですか……そういうものなんですかね」

「そうよ。とにかく食事にしましょう。私お腹がすいちゃった」

 時刻は十一時半、ランチをとることにしたふたりは、近くのイタリアンレストランへ入った。
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