エリート上司の過保護な独占愛
「どうしたんだよ、すごいイメチェンだな」

「あ、はい。ちょっと気分転換に」

 さすがに裕貴に振り向いてほしいから――などという本当の理由は言えない。

 沙衣は本来の目的である裕貴の反応が見たいのに、上迫が視界を遮って様子がうかがえない。

「すげーいいよ。こんなにかわいくなるなんて反則じゃない? なぁ、今度飯に行こう」

「あの、いえ……」

 (なんだか変な話になってきちゃった)

 今まで上迫からこんなふうに誘われたことなどなかった沙衣は、ひとりで機関銃のように話し続ける上迫の前で、どうしたものかと苦慮する。

「やっぱり、磨けば光ると思ってたんだよな。俺の目に狂いはなかった、それで食事なんだけど――」

「おい、仕事中にそう言う話をするな。恋愛は自由だがせめてフロア内じゃなく廊下で話をしろ」 

 裕貴の冷たい声が、上迫の口を止めてくれた。

 やっと言葉の応酬が止まって安堵するはずなのに、沙衣はそれよりも裕貴の冷たい言葉に胸が詰まる。

 それと同時に、浮かれた気持ちで職場に来てしまった自分を反省する。

 皆、真剣に仕事をしている。それなのに沙衣は自分の恋がために、周りが見えなくなってしまっていた。

 これでは裕貴に好印象を与えるどころか、TPOをわきまえられない女性として軽蔑されてしまう。まるで逆効果だ。

 (自分のことしか考えていなかった……私、最低だ)
 
 「申し訳ありませんでした」
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