エリート上司の過保護な独占愛
「わかった、今回についてはその値段で構わない。しかし以後このようなことが続くようでは、うちも何らかの対策をたてなければならない。戻ったら少し話をしよう」

 難しい顔でそう言って、電話を切った裕貴が「本城さん、ちょっといい?」と沙衣を呼んだ。

「ユニヴェールの件だけど、ここの数字だけ変えてすぐに手配できるようにしておいて。今週の売上に入れるから」

「はい、かしこまりました」

 ここ最近、この会社からの受注が目に見えて落ちていることが気になると話をしようとした。けれど営業担当でもない沙衣が口をはさむべきかどうか悩んだ。

 それに加え朝の裕貴の冷たい態度がふと脳裏をよぎり、躊躇してしまう。そんなことをしているうちに、裕貴のデスクの電話が鳴った。

「頼んだぞ」

 裕貴は短く言うと、すぐに電話に手を伸ばす。紗衣も「はい」とだけ答えて自分の席に戻った。

 朝の課長の態度が尾を引きずっていて、気持ちがなかなか落ち着かない。社会人として当たり前のことを言われただけだ。プライベートな感情を仕事に持ち込むなど言語道断。

 紗衣自身もそれはわかっているけれど、どうにもこうにもコントロールできずに、ため息を漏らした。
 
 どんなに気持ちが乱れていても仕事は次々とやってくる。今の紗衣にはそのほうがありがたかった。
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