エリート上司の過保護な独占愛
「紗衣、私もう上がるけど何か手伝おうか?」

 時刻は十八時。終業時刻から三十分経過していた。

 上からはあまり残業をしないように言われているが、紗衣は営業担当から急いで工場に出荷指示をかけるように言われ、作業中だった。

 朝の話を相談したい……そう思うけれど、仕事を放りだすわけにはいかない。それに貴重な休日を割いてまで買い物につきあって、アドバイスしてもらったのに結果が散々だったなどと言いづらい。

「私もこれが終わったら帰りますから、大丈夫です」

「そう。じゃあ、お先に」

 フロアを出る絵美に「お疲れ様でした」と声をかけ、数字の並ぶパソコンの画面に向かった。

 相手先、品番、数量、金額……チェックするところを一通りチェックして、担当者印を押して課長のデスクの未済ボックスに入れた後、売上日報に数字を入力した。

 そのころになると、外回りをしていた営業が戻ってくる。帰り支度を始めていた紗衣を、同じ課の宮前(みやまえ)が捕まえた。

「悪いけど、これ帰りに総務に持っていってもらえる?」

 両手を合わせる宮前に「いいですよ」と笑顔で答え、書類を受け取った。

「助かるよ。いつもついつい色々頼んでごめん。ほら、山下さんはさ、『これ私の仕事じゃありませんっ!』って断っちゃうから」

 紗衣も何度かその場面を見たことがある。はっきりとした性格といえば聞こえはいいが、結局は仕事を選んでする佑香のフォローも、紗衣に回ってくることが多々あった。

「気にしないでください。ちょっと帰りに寄るだけですから。では、お先に失礼します」

 紗衣はフロアの皆に聞こえるような挨拶をすると「お疲れ様~」という声が、聴きながら総務部に向かった。

 エレベーターに向かって廊下を歩く。
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