エリート上司の過保護な独占愛
「いたた……」

 足の痛みに耐えきれず、思わず声が出てしまう。新しい靴を履いて一日仕事をした。慣れない靴はそれだけでも負担が大きいのに、いつもよりも高いヒールのせいでバランスを取りながら歩いていたせいで、足に相当な負担がかかっていた。

 〝背伸び〟した代償だから仕方ない。

 そう思いヨロヨロしながらエレベーターに向かう。いつもなら二階下の総務部には階段を使うのだけれど、足の疲れが限界に達していた沙衣はエレベーターのボタンを押した。

 階数表示のランプがゆっくりと変わりながら、ここ五階に到着した。扉が開いて中に入ろうとすると、降りる人に気がついて咄嗟に下がった。

 と、同時にバランスを崩した紗衣は、倒れそうになる。

「あっ……」

「危ないっ」

 ぐいっと腕を引かれ、なんとか倒れずに済んだ。そのままエレベーターの中に引きこまれた。

「すみません……えっ」

 なんとか持ちこたえて、顔をあげるとそこには裕貴の顔があった。はっと驚き、咄嗟に距離を取ろうとした沙衣は、またしてもよろけそうになる。

「ほら、また」

 自分でもあきれてしまうほどの迂闊さに、恥ずかしさがこみ上げてくる。

「重ね重ね、申し訳ございません」

 今度はふらつかないように、勢いよく頭を下げた。顔をあげると苦笑している裕貴と目が合う。

「そんなに謝らなくてもいい。それより、足は大丈夫か?」

「はい。ご心配をおかけして――」

「いいから、いいから」
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