エリート上司の過保護な独占愛
 謝罪を断られた紗衣は、きょとんとして裕貴を見た。すると何か考えごとをしているような様子で、一度口をひらきかけて閉じた。いつもは物事をはっきりという裕貴の態度を不思議に思った。

 しかし紗衣はそれよりも、自分の立て続けの失敗が気になりこの場にいるのがつらかった。仕事こそはいつも通りだったが、朝から裕貴にはあまりいい印象を与えられていなかった。

「あの課長、降りるんじゃなかったんですか?」

「あぁ、そうなんだが……いや、あの、あれだ」

 奥歯にもののはさまったような言い方をして、何かを言おうとしている。そうこうしているうちにエレベーターの扉が閉じかけた。

 慌てて【開】のボタンを押そうと伸ばした紗衣の手を、裕貴が掴んだ。そのせいでゆっくりとエレベーターの扉が閉じて、狭い空間にふたりっきりになる。

「えっ」

「あ……悪い。っていうか、謝りたいのはこんなことじゃなくて」

 裕貴は掴んでいた沙衣の手を離し、彼女を見た。好きな人にまっすぐに見つめられて心拍数は、どんどんと上がっていった。

「今朝のこと謝ろうと思って。あんなふうに頭ごなしに言うことじゃなかったよな」

 (うそ……まさか気にしてくれていたなんて)

 思いもよらない謝罪に驚いた紗衣は慌てて裕貴に応えた。
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