風の旋律
僕を見つめてぽかんとしている音羽に、僕は続ける。
『僕は、愛とか恋とか、そういうのはよく分かってなかった。
親の愛とか、友達との友情とか、ひねくれ者の僕には身近にはなくて…。
でも、音羽に出会ってから、初めての感覚が現れて…驚いた。
これが恋なのか、愛なのか、最初は本当にわからなかった。
それに…もし僕が音羽に恋をしてしまったとしても、僕は音羽を幸せにすることはできないと思った。
僕は愛し方を知らないから。これが恋なのかもわからないし、施設育ちで将来のことも考えられてない僕には、才能もあって綺麗でかわいい音羽には不釣り合いだ。』
「かっ…?」
僕の言葉に真っ赤になる音羽に、思わず笑みがこぼれる。
僕はそのまま音羽を見つめて続けた。
『だから、音羽に友達もできて、学校になじみ始めてからは、僕は音羽から離れようと思った。
同性の友達の方がいいだろうし、これから彼氏でもない男がそばにいたら、音羽も恋ができないと思った。
僕と違って音羽はモテるし、僕はいつか邪魔になると思った。』
「そんなことないっ!!」
『?』
急に泣きそうな顔になった音羽が叫んだ。
「そんなこと…ない…よぉ…」
『音羽…』
俯いた音羽は、小さな声で話し出す。
「不釣り合いなのは…私のほう…だよ…?
かわいくないし、性格も扱いづらいし…
ピアノしかなかったのに……こんなになっちゃって…ほんとに…なんにもないよ……」
『音羽…
僕は、恋心なんてわからなかった。
でも、僕は音羽が泣いていたら抱きしめて涙を止めてあげたいと思う。
音羽が笑っていたら、その笑顔を守りたいと思う。
音羽が怒っていたら、音羽の思いを全部受け止めたいと思う。
音羽が苦しんでいたら、少しでも楽にしてあげたいと思う。
音羽が望むことは、かなえてあげたいと思う。
僕にできること全部で、音羽を幸せにしてあげたいと思う。
これは…愛なんだと思う。』
「ゆう……すけ……」
『もう一度言うね。
音羽…僕は…君を愛している。』

