御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「では、乾杯!」
新入社員代表の挨拶が終わり、グラスが高々と掲げられる。
「かんぱーい!」
いろんな飲みものが入ったグラスが持ち上げられ、あちこちでグラスを合わせる音がする。
それからパーティー会場は、ワイワイと急に賑やかになった。
(本当に、新入社員の年齢ってバラバラなんだな……)
早穂子はグラスに口をつけつつ、ぼんやりと周囲を見回した。
高卒の十代から定年退職後の六十代まで、会場には五十人程度の新入社員しかおらず、ここに上司と呼ばれる人間は、ほぼいない。
純粋に、新入社員の横のつながりを持たせるための懇親会らしい。
そもそも山邑リゾートは、新卒という縛りどころか年齢制限すらないのである。
さらに入社の時期だって、バラバラだ。春に入ってきたものもいれば、冬に入社したものもいる。
五年ほど前から、副社長の山邑始が「優秀な人材はいつでもウェルカムでしょ」と、始めたことらしい。
なので山邑リゾートの社員たちはバラエティに富んでいて、職場はいつも活気があった。
山邑リゾートで働くことが好きだと思うような社員が集まっているのだった。