御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「始さん、もっと自分を大事にしてくださいね」
「え?」

始がまたきょとんとした顔になる。

だが白臣はそれに対してなにか言うわけでもなく、
「ではまた後程」
と、さっぱりとした表情で立ち去ってしまった。

「シロ……?」

始が不思議そうに目を細める。
だがそれは早穂子も同じだった。

(自分を大事にするってどういうことだろう……?)

早穂子は踵を返してほかのメンバーが歓談している中へと向かっていく、白臣の背中を不思議な気持ちで見送ったのだった。



バッカスの会は、滞りなく続き、いつまで経っても終わりは見えなかった。

会のメンバーは気が付けば入れ代わり立ち代わり変わっていき、酒もどんどん運ばれてくる。

日本酒、焼酎、ビール、ワイン、シャンパン、果実酒、などなど、ごちゃまぜだ。
酒の神バッカスを掲げる会なだけあって、さすがにアルコールの量が尋常ではない。

けれど派手に酔って醜態をさらす人はひとりもおらず、陽気に会話をするか、真面目な顔をして討論をするか、部屋の中はだいたいそのふたつに分かれていた。
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