御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(さすがに飲み過ぎたかも……)
時計の針を見ると、そろそろ日付が変わる時間だった。
早穂子も割とアルコールに強いのだが、これ以上はさすがに明日に差し障りそうだ。
始に一言告げて部屋に戻ろうか――。
そう思ったところで、
「蓮杖さん、隣に座っていい?」
落ち着いた女性の声がして、顔を上げると涼音だった。
アルコールのせいか、ほんのり頬がピンクで美人度が増している。
今まさに部屋に戻ろうと思っていた早穂子だが、こう言われてしまうと立ち去るのも難しい。
「どうぞ」
こくりとうなずいて彼女が隣に座るのを見守った。
「ありがとう」
涼音はにっこり笑って、ふわりと優雅にソファーに腰を下ろす。
そう、まさに“ふわり”とした動作だ。非の付け所がない。
(こんな時でもおしとやかなの、すごい……)
常に他人の目を意識しているのは美人ならではという感じがする。
「あの、お連れの方はいいんですか?」
「マティス? いいのよ。男同士で仕事の話をしてるんだもの。つまらなくて逃げてきちゃった」
そう言って涼音はコロコロと機嫌よさそうに笑った。