御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
言われてあたりを見てみると、もうひとつのソファーセットのあたりに彼女の恋人――マティスの姿がある。始はいないが、そこには白臣がいた。
英語で話しているのはわかるが、あれが仕事の話らしい。
「なにもこんなところで仕事の話をしなくてもいいのにね……って思うけど。男の人はそれがアイデンティティなところもあるものね」
「そうですね」
始だって本人はひょうひょうとしているが相当なハードワーカーだ。しかしそれを表面上は楽しそうにこなしている。
(もう少し休んだ方がいいとは思うけど……)
こくりとうなずく早穂子に、涼音は顔を近づけた。
「ねぇ……山邑君とはどこで知り合ったの?」
目はキラキラと輝き、興味津々と顔に書いてある。
「あの、同じ会社です」
早穂子は戸惑いながら正直に答えた。
「まぁ、そうなの? 珍しいこともあるものね」
それを聞いて涼音は目をぱちぱちさせる。
「珍しい?」
早穂子が首をかしげると、
「彼は自分のテリトリー内から恋人を選ばないから」
と、はっきり言いきられて胸の奥がちくりと痛んだ。
どうしてと尋ねたい気持ちに駆られたが、言葉が出てこない。