御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「ホワホワって……」
「してるでしょ。クールだけど……声が可愛いからかなぁ~ギャップがあっていいわ」
「クールだなんて……ずっと愛想がないって言われてたから。ものはいいようだね」
早穂子は笑う。
そう、昔からおとなしくて真面目で、朝から晩まで本を読んで、外に出ない早穂子は、身内にすら愛想がないとたしなめられることがよくあった。
体が疲れれば眠れるはずだと外に連れ出されても、逆にアドレナリンが出て目が冴えることが多く、日中の辛さが増した。
大学に通うようになって自分のペースで完全に生活できるようになってから、それまでの苦しみはかなり減ったが、やはり昼間はボーッとすることも多く、働きだしてからはかなり気をはって生活するようになった。
だが結局前職で、ささいなミスをして――
それは早穂子のミスではなく、とばっちりのようなものだったのだが、それをきっかけに上司にきつく責められるようになり、不眠症の病気も揶揄され、辛くなって辞めてしまったのである。
運よく山邑リゾートに再就職できたはいいが、相変わらず、人付き合いはあまり得意ではない。
「いやいや、愛想がないってそれはないわ。普通にちゃんと話せてるじゃん。感じいいし~美人だし~」
「夏川さん、さすが営業だ。丸め込まれそうだよ」
「もうっ、お世辞じゃないのにっ!」
可愛らしく頬を膨らませるゆずを見て、早穂子は笑った。