御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「そういえば、まだ副社長来てないみたいだね」
それからしばらくして、ゆずがそわそわしたように会場内を見回す。
「副社長、来るの?」
副社長という言葉を聞いて、少しドキッとした。
「毎年これには顔出してるって聞いたよ。ちょ~~、カッコいいよねっ!」
「あ……うん。すごく、素敵だよね」
早穂子も釣られるようにうなずいた。
山邑始は広い交友関係を持ち、マスコミにも躊躇なく顔をだす。
その地位と華やかな容姿と、魅力的な立ち居振る舞いに憧れない女性社員はいない。
社内では完全に手の届かないアイドルのような立ち位置なのだが、そもそも彼はめったに本社に顔を出さない。
国内外のリゾート開発とホテル経営が主なため、当然世界中を飛びまわっているのだ。
だが今日は、その彼がここに顔を出すという。
(そっか……副社長、来るんだ……)
早穂子の胸は甘く高鳴った。