御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そして濃密な夜の時間が終わった。
二の腕の下にすっぽりと頭をうずめるようにして体を寄せた早穂子の髪を、腕枕をする手ですいていた始は、
「俺、サホちゃんの長い髪大好きだなぁ……」
と言いながら、眠ってしまった。
脱力した彼の手がぱたんとシーツに落ちたのを機に、早穂子はぱちっとまぶたを持ち上げると、身じろぎして始の顔を見上げる。
(きれいな顔してる……王子様みたい……)
普段言動が若干おちゃらけ気味な始は、黙っているとその美貌のすごみが増す。
その落差がたまらなくセクシーだと思う。
そして、睡眠という無防備な時間を過ごしているはずなのに、どこか自分を押さえているような彼の顔を見ていると、どっちが本当の始なのだろうと気になってしまう。
もちろん普段の始が演技というわけではないだろう。
明るくて優しい。人懐っこく気が利いて、甘えん坊でちょっと意地悪な始と、誰もいないところで『疲れた』とため息をついたり、早穂子と体を重ねるときに、どうでもいいことで男らしさを気にしたりする始は、全部同じ始だ。
(人はそう簡単に変われないし、スイッチで切り替わったりしない……当然だけど)
早穂子はじっと、愛おしい人の横顔を見つめる。
愛おしいと思う気持ちがこみあげてくる。