御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

バッカスの会は、翌日からもメンバーが入れ代わり立ち代わりで続いた。

ただお酒を飲むだけでなく、お弁当を持ってハイキングに行ったり、船を借りて釣りに行ったりと、意外にもアクティブなイベントも多く、普段はインドア派の早穂子も楽しく時間を過ごせていた。

だが楽しい時間というのはあっという間に終わるものだ。



「あいたたた……」

早穂子はシャワーを浴びた後、そのままソファーにごろんと横になる。

お行儀が悪いとわかっていたが、一度ソファーに寝ころんでしまうと、もう一歩も動けない。

今朝は早起きしてサイクリングをしたのだ。
朝から天気も良く、自転車をこいでいる間は楽しかったのに、戻ってきた途端どっと疲労が押し寄せてきた。

インドアで事務職の早穂子の体には相当負担だったらしい。

普段使わない筋肉がギシギシと悲鳴を上げていた。

「でも、楽しかったなぁ……」

早穂子はふっと笑う。

自転車に乗ったのは高校生の時以来だ。

あの頃は風を切って自転車を走らせることになにひとつ価値を見出していなかったが、大人になってみると自分でも驚くくらい気分が高揚していた。

(でも、明日にはもう帰っちゃうんだよね……)

そして早穂子は日常に戻る。

日常とはいったいどんなものなのだろう。
いつまでこんな日々を送れるのだろうか――。

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