御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
プルルル――。

突然、スマホが鳴った。

「誰だろう……」

時間はまだ夕方の五時だ。

体を起こしてバッグの中に手を入れてスマホを取り出すと、着信は実家からだった。

「――もしもし」

嫌な予感を覚えながらも電話を取ると、

【早穂子?】

やはり母である。

「どうしたの?」
【どうしたのって……GWになっても帰ってこなかったでしょう? だから気になって】
「うん……」

早穂子は基本的にあまり実家に寄り付かない。

仲が悪いわけでもないのだが、あれやれこやと干渉されることをどうしても煩わしく思ってしまう。
こんな自分を薄情だと思うし、親不孝をしているのではないかと思うが、こればかりは仕方ない。

たとえ親子の間であっても、適切な距離を保っていたほうがいいだろうと思っての事だった。

【家にもいないんでしょう? 今、どこにいるの】

電話口の母の問いかけに、

「どうして家にいないこと知ってるの?」

一瞬、声に戸惑いが混じった。

まさか家まで来たのだろうかとヒヤッとしたのだが、

【宅配便送ったけど、受け取ってないみたいだから】

と、返事が返ってきた。
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