御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「ああ……ごめんなさい」
早穂子はそう答えながらも、複雑な気持ちになる。
どうしてわざわざ黙って荷物をGWに送ってくるのだろう、とか――。
そういう形で不在確認をしようとしたのか、とか。
口には出せないけれど、そんなことを考えてモヤモヤしてしまうのだ。
だが心の奥底では、母はそんなことを考えていないことはわかっている。
そもそも、気になることはなんでも口にするタイプだ。宅配便を使って不在確認をするような、小細工をするような人ではない。
だから、問題があるとしたら、こんな風に考えてしまう自分の方だろう。
(自分の性格の悪さに……引く……)
早穂子は鉛でも飲み込んだような、どんよりと重い気持ちになった。
【早穂子?】
電話の向こうで母が名前を呼ぶ。
ハッと我に返って、
「――旅行に行ってるの。でも、明日には東京に帰るから。宅配便はそれから受け取るわ」
と答える。
【あら、旅行って、誰となの? もしかして彼氏?】