御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

驚くほど弾んだ声で問われて、息が詰まりそうになった。

【彼氏だったら、どうして連れてこないの~? お出迎えするのに!】

一気に電話の声が大きくなって、早穂子はごくりと息を飲んだ。

母は大変なホームパーティー好きなのである。
娘三人の友達はもちろん、夫の部下、近所の人まで、呼ばれていない友人知人はいないのではないかというレベルだ。

早穂子の彼氏と聞けば、即座に彼女にとってはお招きしたい客人になるのだろう。

「いや……お出迎えって。そんな観光地でもないのに……」

早穂子の実家は関東の小さな地方都市で、本当になにもない。絶対にありえないが、始を連れて行ったところでどこにも案内する場所がない。

【あら、やっぱり彼氏と旅行なの!】
「いや……」

早穂子はのらりくらりとかわしながら、曖昧に返事する。

別に誤魔化しているわけではないが、自分でもどう答えていいかわからなくなった。

(始さんって、私の彼氏……なの……?)

始との時間は甘いが、彼を恋人というのも、彼氏というのも違う気がした。

【いやってなによー。煮え切らないわね。一緒に旅行に行くぐらいなんでしょ? あっ、もしかしてあんた、不倫とかそんな人の道に外れたことをしてるんじゃないでしょうねっ!】
「ふっ、……不倫!? そんなわけないでしょ!」

< 129 / 276 >

この作品をシェア

pagetop