御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

さすがにそれはないし、誤解されたくない。

母の言葉に早穂子にしては珍しく大声をあげていた。

「どうしてそんな風に考えるのよ」
【だって……あんたが煮え切らない態度をとるから】
「なにそれ。私のせいってこと?」
【そうは言ってないけど】

早穂子の強い口調に母が戸惑ったように口ごもる。

誰と旅行に行っているか言わないだけで、娘に不倫しているのかというのはいくらなんでもどうかと思うのだが、自分がおかしいのだろうか。

早穂子は深いため息をつく。

「――もう電話切っていい?」

そこで一瞬だけ、妙な間の探り合いのような沈黙が流れた。

【本当に、あんたって子は……】

電話の向こうで呆れたように母はぶちぶちとつぶやくと、

【とりあえずたまには顔を見せなさいよ……】

と言い、そのまま通話が切れてしまった。

「あ……はぁ……」

早穂子は胸の奥にたまった息を吐き、がっくりと肩を落とす。
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