御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どうして自分は、家族相手にうまい立ち振る舞いができないのだろう。
母とはたまにこういうことがある。
気が付けばささいなことからすれ違って、少しだけ嫌な気持ちになる。
(私が悪いのかな……家族なのに……私がだめな娘だから……いつまで経っても家族とうまくやれないのかな……)
頭がずきりと痛んだ。
「……いたた……」
差し込む様な痛みに、思わず手のひらでこめかみのあたりを押さえ、ソファーにうつぶせに丸まっていると、
「サホちゃん、湿布もらってきたよ」
ガチャリと部屋のドアが開いて、始が妙にキラキラした顔で戻ってきた。
「あれ……どうしたの?」
ソファーの上の早穂子を見て、始が足早に近づいてくる。
「具合悪いの? 医者を呼ぼうか」
「――大丈夫です、ちょっと……頭痛がして……」
すると始はそれを聞いて、ソファーに腰を下ろしつつ、早穂子の肩に手をのせ、もう一方の手で背中を撫でてくれた。
「いたいのいたいの、飛んでいけ~」
その声はやけに優しくて……。
唐突に鼻の奥がツンと痛くなって、早穂子の目はじんわりと熱くなった。
(だめ……泣いちゃいそう……)