御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「そうだな。俺、自分の会社の中で女の子と付き合うの初めてだし……。まぁ、昔からそうだ。近い所からは選ばなかった」
「それは……なにか理由があるんですか?」
涼音は別れたら気まずいからなんて言っていたけれど、正直言って早穂子はそうは思わなかった。
始はどこの誰と付き合って別れても、心底嫌われるようなタイプではないはずだ。女の子を気まずくさせたりはしないだろう。
(きっとなにかほかに理由があるはずだ……)
だが次の瞬間始が口にした言葉は、想像していた返事とはまるで違っていた。
「――幸せになってほしいから、かな」
「え?」
意味が分からず、早穂子は抱きしめられたまま肩越しに後ろを振り返る。
「それはどういうことですか?」
けれど始はふっと笑って、
「俺の昔の事なんか、どうでもいいじゃない」
と、きっぱりと言い切ったのだった。
「そんなことでサホちゃんを憂鬱な気分にさせたくないな」
そして振り返った早穂子の額に唇を軽く押し当てた。
「人生とは、今、この時間を楽しむものだよ。そうだろ?」