御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(始さんが好きなチーズも……、あっ、ワインも用意しておかなきゃ……!)
やることは満載だが、すべて始と過ごすために必要なことで、まったく苦ではない。むしろ旅行前の準備のように胸が弾む。
(嬉しい……)
彼のスケジュールをすべて把握しているわけではないが、始は基本的にかなり忙しい男だ。
日本どころか世界にも飛び出して、目が回らないのかと思うが、そんな目の回るような忙しさの中で、彼が自分と過ごす時間をもってくれるというのは、早穂子にとって何事にも代えがたい喜びだった。
そうやっていそいそと――約束の金曜日に向けて、まるで巣作りのように1DKの部屋を整えていた早穂子だったが、
【ごめん、急な仕事が入った。本当にごめんね。お泊りはまた今度に】
と、金曜の当日、お昼休みに始からメッセージが届いたのを見て、早穂子は愕然とした。
スマホには着信もあったので、まず電話をかけ、早穂子が電話に気づかなかったので、メッセージで知らせてきたのだろう。
「ほんとに……?」
お昼休み、ランチの後に化粧室でメイクを直していた早穂子は、スマホを握り締めて思わず声を上げる。
ちらりと腕時計を見れば、昼休みが終わるまでまだ時間はある。