御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(どうしよう……)
こちらからかけなおすこともできるが、電話をかけたところで状況が変わるわけでもない。彼に謝らせるだけだし、余計な気を遣わせる。
「はぁ……」
何度もつづられた文字を読む。
それは何度読んでも始からのメッセージで、間違いない。
頭では仕方のないことだとわかっているが、楽しみにしていた分、落胆も大きかった。
今日という日を心待ちにしていた早穂子は、毎日仕事が終わると同時に家へ飛んで帰ってあれこれと準備をしていたので、それらすべてが無に帰したと思うと、やはり力が抜けてしまう。
(仕事なんだから……仕方ないよね)
がっくりと肩を落としていると、
「なあに~どうしたの?」
と、同じく休憩を終えたらしいゆずが、顔を覗き込んできた。
「あ、夏川さん」
早穂子は慌ててスマホをバッグに放り込んで、「なんでもない」と微笑む。
だがゆずは軽く肩をすくめて、
「なんでもないって~またまた~。」
と、早穂子の肩を軽く小突くと、わかってますよと言わんばかりにニヤリと笑みを作った。
「鳥飼さんからの連絡、待ってるんじゃないの?」