御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

それを手を振って見送りながら、早穂子は「ふぅ……」と息を吐く。

なんとなくパーティー会場に戻る気に慣れなくて、そのまま廊下の突き当りにあるソファーセットに座った。

周囲には観葉植物がソファーを隠すように並べられていて、とても静かだ。

手持ち無沙汰にスマホをバッグから取り出してみれば、妹からメッセージが届いていた。


【お姉ちゃん、たまには帰ってきたらー?】


「帰って来いと言われてもな……」


早穂子の実家はも関東圏内で帰ろうと思えばいつでも帰れるのだが、あまり気が進まない。

なぜなら両親は早穂子の顔を見るたびに、「見合いをしろ、結婚しろ」とうるさいことこの上ないのだ。

正月に帰省した時も、それで辟易して一日早く帰ったくらいである。


【お見合いしろって言われないならね】


早穂子はため息をつきながらそう返事をかえし、バッグの中にスマホを戻した。


(どうして三人も姉妹がいて、真ん中の私ばかりお見合い結婚させようと思うんだろう……。やっぱり一番結婚できなさそうだからかな……?)


両親が心配してくれることに対して、こんなことを思うのは間違っているかもしれないが、お前は人間として欠陥があると思われているようで、正直言って、あまり気分がよくない。


「家族でも……ほっといて……ほしいな……」


思わずそんなことをつぶやいていた。

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